診療科紹介

外 科

いつでも必要な時には“すぐにでも入院が可能”なのが当院の特徴です。“どんな疾患でも、昼夜を問わず”、当日の外科外来担当(夜間は当直医)までご一報いただければ、迅速に対応させていただきます。ただし、整形外科疾患、心臓血管外科疾患につきましては、専門医がおりませんので他院へご紹介いただければと思います。

上部消化管外科

上部消化管疾患では食道癌、食道アカラシア、食道裂孔ヘルニア、胃癌、胃GIST、胃・十二指腸潰瘍(出血、穿孔例)などを取り扱っています。その中で多いのは胃癌であり、図1に術式別手術件数の年次推移を示しますように、現在年間約40例の手術件数です。近年腹腔鏡下手術件数が増加し、全体の半数程度を行っています。腹腔鏡下手術は主に早期癌を対象としD1+郭清を行いますが、低侵襲が望まれる症例では進行癌にも行う場合があります。また胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術の術式は幽門側胃切除術、胃全摘術、噴門側胃切除術を行っています。進行癌/リンパ節転移症例などでは、主に開腹手術(D2郭清)を行っています。また、これらの症例では、適応があれば治療の効果を上げる目的で術後補助化学療法を行います。当センターでの胃癌術後長期成績(生存曲線)を図2に示します。 
胃癌または胃潰瘍手術後の残胃にできた癌のことを残胃癌といいます。その発生率は胃癌全体の1-2%と少ないのですが、進行癌の場合予後が不良といわれています。当科における過去28年間80例の残胃癌手術症例を調査しましたところ、ステージ別の生存率は図3のようにやはり通常の胃癌よりもやや低くなりました。また、図4のように進行残胃癌(pT3/pT4)においては脾摘を伴うリンパ節郭清が予後の改善につながる結果となりました。その理由は進行残胃癌(pT3/pT4)における高率の脾門部リンパ節転移(30.4%)によると考えられました。この結果は欧文雑誌Surgeryに掲載されました(参考文献: Sugita H, et al. Surgery 2016;159:1082-1089)。

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 図1.術式別手術件数の推移 

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図2.胃癌手術後ステージ別生存曲線​
 

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図3.残胃癌ステージ別生存曲線

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図4.進行残胃癌脾摘の有無別生存曲線

下部消化管外科

  • 大腸および小腸のがんや緊急症例に対し、消化器内科、麻酔科および放射線科など関係他科と協力し、迅速で適切な治療を行います。

  • 切除不能進行・再発大腸癌、治癒切除後の進行癌で再発のリスクが高い例に対しては、大腸癌治療ガイドラインに準拠しつつ、患者さんの年齢・身体状態やライフスタイルにできるだけ合わせた化学療法/分子標的治療を、腫瘍内科・消化器内科と協力しながら行っています。また、根治性を高める目的で手術前に化学療法を行うこともあります。

  • 小さな傷で体に優しい腹腔鏡手術を積極的に行っており、症例数は増加傾向にありますが、高度進行例や再手術例など開腹手術が必要なケースも多く、患者さんごとに適切な術式を選択しています。

■取り扱う疾患

  • 大腸悪性疾患(結腸・直腸癌)

  • 小腸・大腸および肛門の良性疾患(腸閉塞《イレウス》、クローン病、潰瘍性大腸炎、大腸穿孔性腹膜炎、虫垂炎、憩室炎、痔核、痔瘻、直腸脱など)

手術症例数

主な疾患の年間手術件数(2016年)は以下の通りです。

  • 結腸/直腸癌:107件(開腹57件/腹腔鏡50件)

  • 虫垂炎:124件(開腹8件/腹腔鏡116件)

  • 腸閉塞(イレウス):18件(開腹16件/腹腔鏡2件)

結腸・直腸癌症例の術後成績

​当院における結腸・直腸癌症例のステージごとの術後成績を示します。

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図5.大腸癌の手術症例数​
 

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図6.大腸癌のステージ別術後生存線
 

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図7.虫垂炎の手術症例数

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図8.イレウスの手術症例数

肝臓・胆道外科

肝臓癌(肝細胞癌・肝内胆管癌・転移性肝癌)、胆道癌(肝門部胆管癌、中下部胆管癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭部癌)などの悪性腫瘍の他、胆嚢結石症、総胆管結石症、先天性胆道拡張症、膵胆管合流異常症、門脈圧亢進症などに対する手術を行っています。

■ 肝臓癌 
肝細胞癌では、肝癌治療ガイドラインを参考に癌の根治性と切除の安全性に配慮し切除率や肝予備能から術式の選択「肝切除:肝葉切除、区域切除、亜区域切除、部分切除」や 「局所凝固療法:ラジオ波凝固療法、マイクロ波凝固療法」を行っております(図9)。また、切除不能例では全身化学療法、肝動脈塞栓療法、放射線治療を他科との協力のもと行っています。肝内胆管癌では、根治切除が可能な場合、積極的な肝切除を行います。胆管浸潤の有無により肝外胆管切除も併施し、リンパ節腫大のある場合や、多発病変の場合、術前の化学療法を行い、切除の可否を判定します。また、大腸癌肝転移でも、集学的治療を行い癌遺残のない切除が可能な症例については肝切除を行うことで根治を目指しております。

 

■ 胆道癌 
胆道癌では手術が唯一根治を期待できる治療法であり、中下部胆管癌、十二指腸乳頭部癌では亜全胃温存膵頭十二指腸切除、胆嚢癌では腫瘍の局在・進展度に応じて肝切除を伴う根治切除を行っております(図10)。切除不能例では全身化学療法、胆道ステント治療を行います。肝門部胆管癌では腫瘍の局在・進展度に応じて肝葉切除+肝外胆管切除を行い、切除肝容積が60%以上の場合、門脈塞栓術を行い十分な肝予備能を確保して手術に臨んでいます。

 

■ 良性疾患 
良性胆嚢炎症例では、発症時期などを考慮して可能な限り早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術を行えるようにしております。また、C型慢性肝炎に対するインターフェロン療法導入前の血小板数増加や脾腫を伴う門脈圧亢進症の血小板増加・肝機能改善のために腹腔鏡補助下脾臓摘出術も行っています。そのほかに有症状の肝嚢胞に対しては腹腔鏡下肝嚢胞開窓術を行い、症状改善を認めています。

図9. 肝 S2 HCCに対する術前検査

術前に肝予備能を十分に吟味して安全な肝切除を行っています。

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肝 S2 HCC

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術前 CT volumetryを行い残肝容積を計算

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胆道癌のステージ別生存曲線

肝臓・胆道外科

当院における膵臓外科の特徴は次の3つです。

 

1. ノータッチ膵切除術(no-touch pancreatectomy) 
 

癌の手術においては、病巣を触ると病巣の内圧を高めて癌細胞をばらまくような操作につながる可能性があります。これは膵臓癌の手術においても同様でありますが、当院では、病巣を触らずに切除する手術術式(no-touch pancreatectomy)を開発し実践しています。根治手術ができた場合(根治手術施行率71%)の5年生存率62%、5年無再発生存率58%と、極めて良好な成績を上げています(図11)。膵癌も治る時代になったと言えると思います。昨年は英国St.James大学から上級専門医(consultant)のアルドゥーリDr.が手術見学にこられました。

2. 血管合併切除の積極的併施 


膵臓癌の予後は、切除できたか否かで大きく違ってきますので、当院では、門脈-大循環パイパスを用いた上腸間膜静脈-門脈の合併切除、自家血管グラフトによる間置再建、上腸間膜静脈多数分枝の一本化形成後再建、など、血管外科の技術を駆使して切除率を高めています。門脈の合併切除率は42%で、約半数は門脈に浸潤した超進行膵癌を切除していることになります。

 

3. 膵実質温存手術(regional pancreatectomy) 


膵臓癌では、癌組織を残さない手術をめざして癌周囲の組織を広く切除しますが、一方、良性や低悪性度の腫瘍では、膵臓実質をできるだけ温存し、患者さんの術後QOLの維持をめざす膵実質温存手術(regional pancreatectomy)を行います(図12-15)。切除後の膵腸吻合を体外で行うのも当院だけの工夫です(図15)。

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図11.膵癌術後成績
(廣田、他.消化器外科2016)
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図13.拡大膵頭下部切除術
(Hirota M, et al. J Gastroenterol Pancreatol Liver Disord 2015.)
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図15.Ex vivo 膵空腸吻合術
(Hirota M, et al. J Gastroenterol Pancreatol Liver Disord 2015.)
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図12.膵頭下部切除術
(Hirota M, et al. Am J Surg 2008.)
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図14.膵頭下部切除+脾動静脈温存膵体尾部切除
(Hirota M. J Minim Lnvasive Surg Sci. 2013.)

ヘルニア外科

鼠径ヘルニアは、腹部と下肢の境界付近の腹壁がやや脆弱な部分から、腹腔内の脂肪や腸管・膀胱などの臓器が皮下や筋層内に脱出する状態です。局所の痛み・不快感が主な症状ですが、腸管が脱出してはまり込む″嵌頓(かんとん)″という状態になりますと緊急処置や手術が必要になります。″病気″というよりも体の構造の″歪み″のようなもので、内服薬や装具での根治法はないため手術が唯一の治療法です。脆弱になっているヘルニアの出口部分(ヘルニア門)を補強する手術を行いますが、近年の標準手術は人口補強材(ポリプロピレン製などのメッシュ)を用いて補強を行う方法です。さらに、鼠径部に直接アプローチする前方切開法と、鼠径部から離れたところからアプローチする腹腔鏡下手術に大別されます。当院では両術式とも行っており、患者さんに最適な術式を選択しています。関連疾患として、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなどがあります。

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取り扱う疾患

内・外鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなど。

手術症例数

年間手術件数(2016年)は以下の通りです。

  • 前方アプローチ手術(主にクーゲル法) 153例

  • 腹腔鏡下手術(TAPP 法およびTEPP 法) 10例

ヘルニア外科

肺癌は、近年増加傾向にある疾患であり、検診や各種画像診断の向上により早期肺癌が発見されることが増加しています。肺癌の標準治療は、肺葉切除+縦隔リンパ節郭清であり、近年は胸腔鏡下に手術を行うことが標準となっております。しかしながら、高齢者や患者の全身状態によっては、標準手術(肺葉切除+縦隔リンパ節郭清)を受けることが難しい患者さんも増加しており、より手術侵襲が少なく根治性を損なわない術式として切除する肺の範囲をより限定した胸腔鏡下肺区域切除も選択する様になってきています。

当センターでは年間約30例あまりの肺悪性腫瘍手術を行っておりますが、その全てに胸腔鏡補助下手術(VATS:Video-Assisted Thoracoscopic Surgery)を実施しております。患側胸壁に約6cm程度の小開胸と約1cmのポート孔2カ所のみで肺葉切除もしくは肺区域切除+縦隔リンパ節郭清術を施行して様々な病状に対応できるようにしております。従来の標準開胸である後側方切開では、約20-30cmの皮膚切開を行うために術後疼痛も強く・胸腔ドレーン留置期間も長期化することがありましたが、VATSでは創痛・ドレーン留置期間のいずれも軽減され、根治性を損なわずに患者満足度の高い術式と思われます。

また、自然気胸症例では、胸腔鏡下ブラ切除を全症例に対して行い、胸腔ドレーンは原則術翌日に抜去する方針としています。このため、短期入院での加療が可能であり2-5日間程度で退院可能となり、患者さんのニーズに合わせた対応が可能です。

乳腺外科

乳がんは近年増加傾向にあり、女性の罹患数は大腸がんを抜いて1位となっています。一方死亡率は決して高いわけでなく全がん死亡率中5位となっています。リンパ節転移の無い2㎝以下の乳がんでは10年生存率は90%以上であり、リンパ節転移があっても転移個数が数個と多くなければ、適切な治療を受けることで80%以上の方に10年生存率が望めます。
“乳がん”と一括りに語られることが多いですが、実は遺伝子背景やホルモン感受性の有無等からいくつかのサブタイプに分類されることが分かっており、これらのサブタイプごとにそれぞれに合った治療選択していくことで高い治癒率を望むことできます。このため、進行度やサブタイプ毎で治療の順番や治療方法が異なっており、専門医と相談しながら治療法を決定しつづけていく必要があります。

当院では手術治療を中心に、検診後精密検査や術後の補助療法、再発後の治療等の乳がんの治療を行っています。手術治療には大きく分けて乳房を残す温存手術と乳房をすべて切除する乳房全摘除術があります。また、腋窩リンパ節に対しては術中に検査を行い、検査結果を踏まえて、摘除した方がよい方にだけリンパ節郭清を行うセンチネルリンパ節生検を基本治療としています。検査結果がでるのに30分程度かかりますが、乳房の手術と同時に施行でき、負担の少ない検査となっています。

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図17.乳癌手術数の年次推移

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